過度な炭水化物・脂質制限食は寿命に影響を与える!?

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炭水化物や脂質制限食は体重減少を促し、肥満やメタボ、糖尿病の予防・改善に有効と報告されています。


しかし、これらの食事法がすべての人にとって効果があるわけではない可能性もあります。


今回、名古屋大学の研究グループが、日本人を対象に炭水化物および脂質摂取量と死亡リスクの関係について報告していたのでご紹介します。



炭水化物・脂質とは?



炭水化物は、ご飯やパン、パスタのほか、イモ類や甘味料類に多く含まれている栄養素です。


栄養学的に見ると、炭水化物は糖質と食物繊維の総称として使用され、ダイエット法として使われる場合は、糖質を意味することが一般的であるため、糖質制限ともいえます。


また、脂質は肉類やサラダ油、ゴマ油などの油脂類に多く含まれています。


脂質制限は、カロリーが多い脂質を制限するため、ダイエット法としてはカロリー制限と言い換えることができます。 










海外では炭水化物・脂質制限は死亡リスクを増加させるとの報告



炭水化物制限や脂質制限はダイエット法として広く知られていますが、近年の研究では過度な炭水化物や脂質摂取制限が死亡リスクを高める可能性があることがわかってきています。


例えば、2018年、ハーバード大学の研究グループは炭水化物摂取量と病気や死亡率の関係を25年間追跡調査しています。


追跡調査の結果、炭水化物の摂取が多すぎても少なすぎても死亡リスクが高くなることを明らかにしています。


しかし、これらの報告は欧米人を対象に行われているため、欧米人よりも1日当たりの炭水化物摂取量が多く、脂質摂取量が少ない日本人に、これらの結果が当てはまるのかどうかわかっていません。


そこで行われたのが名古屋大学の研究グループによる日本人を対象とした追跡調査になります。


研究グループは、健康な日本人男性34,893人と女性46,440人、約8.1万人のデータを約9年間にわたって追跡し、炭水化物と脂質の摂取が寿命にどのような影響を与えるのか調査を行いました。


対象者の食物摂取頻度調査票から、1日当たりの炭水化物と脂肪の摂取量を推定し、エネルギー比率として算出して摂取量と死亡リスクの関係について比較しています。


エネルギー比率とは摂取エネルギーの中で各栄養素が占める割合を指します。


炭水化物は男性の低摂取、女性の過剰摂取は死亡リスク増



炭水化物と死亡率の関係は性別によって異なる結果が得られました。


男性の炭水化物摂取の場合、摂取量50%から<55%群(基準群)を「1」としたときの、男性の低炭水化物摂取群(<40%群)の全死亡リスクは1.59倍、がん死亡リスクは1.48倍に上昇していました。


循環器疾患死亡リスクでは、エネルギー比率が基準群を下回ると増加する傾向がみられました。











女性の場合は、リスク比が時間の経過とともに変化する傾向がみられたため、追跡期間を「5年以上」と「5年以下」に分けて分析を行いました。


追跡期間が 5 年以上の場合、エネルギー比率が65%を超える「高炭水化物摂取群」で全死亡リスクが1.71倍となっています。また、炭水化物を多く摂取すると、がん死亡リスクも高くなる傾向がみられます。


一方、追跡期間が5年未満の場合、循環器疾患死亡リスクは、基準群より多い摂取でも少ない摂取でも、大きく増加することがわかります。


追跡期間が5年以上の場合、50%から<55%群を基準群としたとき、高炭水化物摂取群(≥65%群)の全死亡リスクは1.71倍に上昇し、がん死亡リスクも同様の傾向が示されています。










脂質は男性の過剰摂取、女性の脂質不足が死亡リスク増



脂質についても男性と女性で異なる結果が認められました。


男性の脂質摂取量の場合、摂取量20%から<25%群(基準群)を「1」としたときの、高脂質摂取群(≥35%群)でがん死亡リスクは1.79倍に増加していました


また、循環器疾患死亡リスクは、脂質摂取量の増加に伴って上昇する傾向が見られました。


脂質を飽和脂肪酸(肉類、乳製品、加工食品など)と不飽和脂肪酸(魚、植物油、ナッツ類など)に分けて検討すると、男性では「不飽和脂肪酸」の摂取が不足すると全死亡リスクとがん死亡リスクが高まることが示されました。










女性では、脂質摂取量が増えるほど、全死亡リスクとがん死亡リスクが減少する傾向が確認されています。


また、脂質を飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けた場合、「飽和脂肪酸」の摂取量が多い方が、全死亡リスクとがん死亡リスクが低下する傾向がみられています。










結果まとめ



この報告の結果をまとめると以下のようになります。










極端に制限することは健康長寿につながらない



極端な炭水化物や脂質摂取を長期間続けると、寿命に影響を与える可能性がることが明らかとなりました。


研究グループは、このような極端な食事習慣を見直すことを提案するとともに、将来の死亡リスクを考える上で食事バランスの重要性を説いています。




参考)

名古屋大学研究成果発信サイト. 2023年7月14日
J Nutr. 2023 Aug;153(8):2352-2368.
Lancet Public Health. 2018 Sep;3(9):e419-e428.





ダイエット法として炭水化物や脂質を極端に少なくした食事を長期間続けることはないかと思いますが、長期的な視点で見ると寿命に影響を与える可能性があります。


炭水化物や脂質制限を行う場合は、医療従事者など専門家のもとで栄養指導やダイエットプランを提供してもらうのがよいかもしれません。

  • このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
  • 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。
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