「更年期になると太りやすくなるのは、代謝が落ちるから」
そう思っている方は多いかもしれません。
確かに40代後半から50代にかけて体重が増えやすくなり、「年齢のせいだから仕方ない」と感じることもあるかもしれません。
しかし近年、その常識を見直すきっかけとなる研究結果が報告されています。
今回は、更年期太りの新しい考え方と、最新研究から見えてきた食事のヒントをご紹介します。
実は代謝はそれほど落ちていなかった
これまで「年齢とともに代謝が落ちる」という説明は広く信じられてきました。
ところが2021年にScience誌で発表されたデューク大学などによる研究では、世界29か国・約6,400人以上のデータを解析した結果、人間のエネルギー消費は20歳から60歳頃まで比較的安定していることが報告されています。

つまり、多くの人がイメージしているほど、40代や50代で代謝が急激に低下するわけではない可能性が示されています。
もちろん更年期には女性ホルモンの変化が起こり、お腹まわりに脂肪がつきやすくなることも知られています。
しかし、「更年期だから太る」「年齢を重ねたから太る」という単純な話ではなさそうです。
そこで気になるのが、「では、何が更年期の体重増加に影響しているのか」という点です。
3万8千人を12年間追跡
2026年5月、ハーバード大学公衆衛生大学院などが発表した報告があります。
研究グループは、平均年齢45.6歳の女性約38,000人を対象に、更年期前後の約12年間にわたって食習慣と体重変化の関係性が調査しました。
この追跡期間中、女性たちの体重は平均して年間0.8kgずつ増加し、5,214人が肥満を発症していました。
また、研究グループは、参加者が4年ごとに回答した食事内容をもとに12種類の食事パターンスコアを算出し比較しています。

こららの食事パターンと体重変化を解析した結果、肥満リスクの低下と最も強く関連していたのが「植物性タンパク・全粒穀物を重視した食事(PHDI)」と「インスリンを上げやすい食事(逆EDIH)」でした。
植物性タンパク・全粒穀物を重視した食事を最もよく実践していたグループは、最も実践していなかったグループと比べて、肥満になるリスクが半分(54%減)になっていました。
同様に、インスリンを上げやすい食事パターンをよく実践していたグループでも、肥満リスクはおよそ半分(49%減)に低下していました。
更年期前後という体重が増えやすい時期であっても、食事パターンによってこれほど大きな差が生じていたことは、非常に興味深い結果となっています。
なぜ食事でここまで差が出たのか?
今回の研究で興味深いのは、単に「食べる量」ではなく、「何を食べていたか」で大きな差がみられたことです。
更年期には女性ホルモンの変化に伴い、脂肪が蓄積しやすくなったり、インスリンの働きが変化しやすくなったりすることが知られています。
インスリンは血糖値を調整する重要なホルモンですが、精製された炭水化物や糖分の多い食品を頻繁に摂ると、多く分泌されやすくなります。
研究で良好な結果を示した食事パターンに共通していたのは、野菜・果物・豆類・ナッツ類・全粒穀物を中心とし、赤肉・加工肉・フライドポテト・ナトリウムの多い食品を控えていたことでした。
これら食物繊維が豊富な食品は血糖値の急上昇を緩やかにするため、インスリンの過剰な分泌を抑えやすくします。
一方、インスリン負荷の高い食事パターンは研究でも体重増加との関連が確認されており、食事全体の質の改善が更年期前後の肥満リスクの差につながった可能性があると考えられています。
今日からできること
今回の研究が示したのは、日常の食事全体の質が鍵だということです。
研究結果を日常に置き換えると、意識したいのはシンプルに2つ。
●増やしたいもの
野菜・果物・豆類・ナッツ類・全粒穀物
●控えめにしたいもの
赤肉・加工肉・フライドポテトなどの揚げ物・塩分の多い加工食品
何かを完全にやめる必要はありません。「更年期だから仕方ない」ではなく、毎日の食事(食材)選びをちょっと変えてみる。
白米から玄米の頻度を高めてみる、おやつをスナックからナッツに変えてみる。
変化の多い更年期だからこそ、食事を見直すいいタイミングかもしれません。
参考)
Science. 2021 Aug 13;373(6556):808-812.
JAMA Netw Open. 2026 May 20;9(5):e2613102.
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。

