ビタミンCは、健康を支える栄養素というイメージがあります。
実は、ビタミンCは私たちの体の中だけで働いているわけではありません。
身近な食品のおいしさや品質を守るためにも、さまざまな場面で活躍しています。
今回は、あまり知られていない「ビタミンCのもう一つの顔」をご紹介します。
ペットボトルの緑茶にビタミンCが入っている理由
ペットボトルの緑茶の原材料を見ると、ビタミンCと表示されています。
製造工程で減ってしまったビタミンCを補う意味もあるようですが、主な目的は酸化防止剤としての働きです。
緑茶には、カテキンやクロロフィルなど、色や風味を生み出す成分が含まれています。これらの成分は、空気に触れると酸化が進み、時間の経過とともに色や香り、風味が変化してしまいます。
ビタミンCは、自らが先に酸化されることで、ほかの成分が酸化するのを防ぎ、鮮やかな緑色や風味を保つために利用されています。

体内では、紫外線やストレスなどによって発生する活性酸素にビタミンCが電子を与え、中和・無害化する方向へ導くことで、細胞を酸化ストレスから守っています。
つまり、ビタミンCは、食品では品質を守り、体内では細胞を守る。
ビタミンCの基本的な役割は、「酸化をコントロールすること」といえるかもしれません。
パンでは別の役割が活躍
ペットボトルの緑茶では、ビタミンCは酸化防止剤として品質を守るために使われていました。
一方、パンづくりでは、これとは別の目的でビタミンCが利用されていることがあります。
それは、パン生地の状態を整え、ふんわりと焼き上げることです。
パン生地は、小麦に含まれるグルテンというタンパク質が網目状の構造をつくることで、発酵中に発生する炭酸ガスを抱え込み、大きく膨らみます。
このグルテンの状態が、パンのボリュームや食感を左右する重要なポイントになります。

ビタミンCは”変身”してから働く
ここで少しだけ専門的な話になります。
パンに加えられるビタミンCは、そのまま働くわけではありません。
生地をこねる際中に取り込まれた酸素や、小麦粉に含まれる微量の金属イオンなどの働きによって、ビタミンCは酸化型ビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)へと変化します。
この酸化型ビタミンCが、グルテン同士の結びつきを強める方向に働き、生地に適度な弾力を与えます。
その結果、生地は発酵で生まれたガスをしっかり保持できるようになり、ふんわりとボリュームのあるパンへと焼き上がります。
菓子パンなどの原材料表示に「酸化防止剤(V・C)」と記載されている場合は、保存中の品質を保つこと以外に、本来の生地を整える目的で添加されていることが多いようです。

わずかな量で大きな違いを生み出す
ビタミンCがグルテンに与える影響はとても強力で、必要な量は小麦粉に対して数ppm(100万分の数)という、ごくわずかな量です。
例えば10ppmなら、小麦粉1kgに対してわずか10mg。
ほんの少しの量でも、生地の状態や焼き上がりに違いが現れます。
もちろん、多ければよいわけではありません。
添加し過ぎると生地が締まり過ぎてしまうため、パンの種類や製法に応じて最適な量を細かく調整する必要があります。

ビタミンCの知られざる一面
私たちはビタミンCを「健康のために摂る栄養素」として意識することがほとんどです。
しかし実際には、食品の色や香り、食感、品質を支える機能性素材としても、私たちの食生活を陰で支えています。
体の中では細胞を守り、食品では品質を守り、ときにはパンのおいしさまで支えている。
同じビタミンCでも、その活躍の場は実にさまざまです。
参考)
おいしいパンの百科事典 はみだし授業 Pain60環巻10号(一般社団法人日本パン技術研究所)
ビタミンC研究会 やさしいビタミンCの知識 ビタミンCの還元作用
スーパーで買い物をした際は、原材料表示をのぞいてみてください。
「こんなところにもビタミンCが使われている!」
そんな新しい発見が、あるかもしれません。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。

