献血といえば、「誰かの命を支える行動」というイメージが強いかもしれません。
実際、献血は多くの医療現場で欠かせない重要な役割を担っています。
一方で、輸血を必要とする人だけでなく、献血を続けている人の血液の健康を助けるような遺伝子の変化が起きている可能性が示されています。
今回は、2025年5月血液学術誌Blood(オンライン版3月)に記載された論文をご紹介します。
造血幹細胞とクローン性造血
わたしたちの骨髄には「造血幹細胞」という、すべての血液細胞のもとになる細胞があります。
この細胞は年をとるにつれ、少しずつ遺伝子に変異(変化)が蓄積されていきます。そして、特定の変異を持つ細胞だけがどんどん増えていく現象を「クローン性造血(血液の老化)」と呼びます。
実は、この現象の一部は白血病などの血液がんに結びつくことが知られており、「どんな変異が増えるか」はとても重要な問題となっています。
研究グループは、定期的な献血がこの「どんな変異が選ばれるか」に影響を与えるのではないかという点に着目し検討を行っています。

100回越えの献血者との比較
研究グループは、生涯の献血回数が100回を超える男性217人と献血経験が5回未満の男性212人の血液を比較しています。
そして、遺伝子解析で造血幹細胞の変異パターンを詳しく調べ、さらに実験室でも特定の変異を持つ幹細胞を実際に培養して、その振る舞いを観察しています。
100回越えの献血者は体によさそうな変異が多い
解析の結果、2つのグループで「クローン性造血(血液の老化)の全体的な発生率や規模」に大きな差はありませんでした。
しかし、注目すべき違いが見つかりました。
それは、血液がんと関係する「DNMT3A」という遺伝子の変異パターンが、2つのグループで異なっていたのです。
100回越えの献血者では白血病の前段階として知られる危険な変異ではなく、血液をスムーズに作ることを助けると考えられる別のタイプの変異が多く見られました。
さらに培養実験では、この変異を持つ幹細胞は、献血後に体内で増加するホルモン「エリスロポエチン(EPO)」があると活発に増え、変異を持たない幹細胞よりも速く血液を再産生する力が高いことが分かりました。
一方、白血病につながる変異を持つ細胞は、同じ環境では逆に増えにくかったとのこと。
マウスを使った実験でも、この変異は出血ストレスの後により健全な血液の回復をもたらすことが確認されました。
研究グループは「定期的な献血のような、血液産生に低レベルのストレスをかける行動は、造血幹細胞の再生を助け、病気ではなく幹細胞の成長を促す変異を有利にすると考えています」と述べています。
つまり、定期的な献血によって、健康的な血液幹細胞の増殖を促進する可能性があることが示されたということになります。
但し、この研究は比較対象者が約400人と比較的小規模であるため、献血によって血液がんのリスクを確実に下げるといものではありません。
今後、より大規模な検討を重ねていく必要があります。
参考)
Blood. 2025 May 22;145(21):2411-2423.
sciencealert.com Health 18 March 2025 By David Nield
輸血は交通事故などで大怪我をしたときに使うものと思いがちですが、実は輸血用製剤の約80%は「がん」や「白血病」などの治療に使われているそうです。
確定的な結論ではありませんが、「人のために行うことが、自分の体にも影響しているかもしれない」そう考えると、少し見え方が変わってきませんか?
もし機会があれば、最寄りの献血ルームや献血バスに足を運んでみてはいかでしょうか?
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。

