うがいの歴史とその効果とは?

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小さいころ、家に帰るとすぐに「うがい、手洗いをしなさい」とよくいわれたかと思います。


手洗いは風邪などの感染症に効果があることは皆さまご存じ通りです。


では、「うがい」って本当に効果があるのでしょうか?


今回はうがいの歴史や効果についてご紹介します。



うがいは日本独特の文化




「うがい」は漢字で書くと「嗽」と書きます。この漢字の意味は水や薬で口をすすぐことです。


また、「うがい」の語源は日本の伝統漁法「鵜飼い」にあるそうで、鵜に魚を飲み込ませ、その後に吐き出させる様子が似ているため、「うがい」と呼ばれるようになったとされています。


うがいが文献に最初に登場したのは国語辞典「下学集(かがくしゅう)」(室町時代:文安元年、1444年)になります。


辞典の中で、うがいは「鵜飼(うがひ)は嗽(くちすすく)ぐ也」と記載されています。


また、室町時代中期に活躍した北条早雲は、家訓「早雲寺殿二十一箇条」の中で、「水はいくらでもあるからといって、ただうがいをして捨てたりしないこと」と日常生活の心得を残しています。








日本ではうがいは昔から文化として根付いていましたが、外国では、うがい文化はほとんどないそうです。


その理由として外国の水道には微生物が多く含まれているので、その水で「うがい」をすると逆効果とになるというもので、日本の衛生状態がいかによかったのかがわかります。


また、人前で音を立て、水を吐き出すのはエチケット違反と思われるのも関係しているのかもしれません。


ちなみに、日本では薬局で買えるうがい薬はアメリカで見かけることはなく、歯磨き後の菌を洗い流す目的の口内洗浄液(マウスウォッシュ)が一般的のようです。


うがいの歴史は2500年前から?!




神社にお参りに行くときに、「手水舎(ちょうずしゃ)」で口をゆすぎ、手を洗うことは、「清め」の意味があります。


現在では、手を洗う方の方が多いかもしれませんが、これは「古事記」や「日本書記」の時代から行われていた日本の習慣になります。


この習慣がお清めの意味から感染症予防に形を変えたのは、日本で最初に疫病が流行した頃(古墳時代:3世紀中ごろ~4世紀)までさかのぼるといわれています。


当時の第十代崇神(すじん)天皇が手洗いやうがいを推奨したそうです。


とはいえ、ここまで感染症予防として、うがいの歴史が古いかはわかりませんが、平安時代や室町時代に記録が残っているため、その後の戦国時代には口腔清掃の手段として「うがい」が始まったと考えられます。


しかし、日本でうがいや手洗い習慣が、本当に一般化したのは、戦後になってからのことで、水道や学校教育の普及が大きな影響を与えています。








うがいの効果はあるの?




世界的な新型コロナの流行もあり外国でも手洗いやうがいを推奨している国も多くなっているようですが、外国では近代までうがいの効果は信じられていなかったようです。



欧米では手洗いや手指の消毒に比べて、うがいについてはそれほど普及しておらず、学術的な論文もあまり多くないのが現状です。


そんな中、ようやく2005年に京都大学の研究グループがうがいの効果について論文を発表しました。


研究グループは、うがいをしないグループ、水でうがいをするグループ、ヨード液でうがいをするグループの3つのグループにわけて、うがいの効果を検討しています。


その結果、100人中うがいをしないグループは26.4人が風邪を引き、水でうがいをするは17人、ヨード液でうがいをするは23.6人が風邪を引いたとなっています。


うがいによる感染症予防効果が多少はあることが実証されました。








また、2006年には浜松医科大学の研究グループが2~6歳の子供約2万人を対象に、最低1日1回のうがいをする子どもが、しない子どもと比べて37.5度以上の発熱した子供の割合に差があるかどうかを調べています。


調査期間は2006年1~2月の約20日間となっています。


その結果、うがいをした子供の発熱率は0.4パーセントだったのに対して、うがいをしなかった子供の発熱率は1パーセントと報告しています。


うがいに使う液体の違いについても検証しており、緑茶の発熱率が1番低く、次いで食塩水、そして水道水の順で高くなったとのことです。


お茶が入っているのは静岡県の大学だからでしょうか。


京都大学の論文報告者の川村 孝氏によれば、うがいの効果は、うがいによってウィルスが洗い流されるのではないそうです。


風邪はウィルスが存在するだけで感染するわけではなく、口の中に存在するある種のタンパク質(酵素)の作用を受けて、細胞に侵入します。


うがいは、ウィルスが細胞内に入るために必要なタンパク質を取り除くことができるため、感染しにくくなるのではないかと、話されています。

参考)

同志社女子大学. 教員によるコラム. 2020.3.11

小田原市. 早雲寺殿廿一箇条. 2021年06月14日

Am J Prev Med. 2005 Nov;29(4):302-7.

J Epidemiol. 2012;22(1):45-9.





今回のメルマガはあくまで風邪に対する報告になります。


インフルエンザやコロナウィルスなどに対する「うがい」の効果は、いまだ科学的に証明されていないのが現状です。


そのため、厚労省もインフルエンザ予防啓発ポスターから「うがい」を外しています。



  • このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
  • 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。

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