ダイエットといえば、「脂質(あぶら)を減らすこと」が基本と考えられてきました。
一方で、「タンパク質を増やすことが重要」だという認識も広がっています。
タンパク質は筋肉量の維持に関わり、基礎代謝の低下を防ぐ要素として、また食後の満足感を高めることで食べすぎを防ぐ効果も期待されています。
今回は、単に脂質を減らすだけのダイエットではなく、タンパク質・炭水化物・脂質の食事バランスによって起きる体と体型の変化についてご紹介します。
この研究は、2025年8月号のInternational Journal of Obesity誌に記載されています。
83の研究解析データを統合した信頼性の高い分析
研究グループは、参加者をグループに分けて異なる食事を一定期間続けてもらい、その結果を比較した83本の研究を統合的に分析しています。これはランダム化比較試験といわれ、信頼性の高い研究になります。
対象は主に太り気味または肥満の成人(一部健常者も含む)で、「タンパク質を多めに摂る食事」と「普通のタンパク質量の食事」を比較しています。
評価項目には、体重、BMI、ウエスト周囲径、体脂肪量、除脂肪量(筋肉量)、さらには中性脂肪やHDL(善玉)コレステロールといった血中指標も含まれており、体の中まで含めた変化まで踏み込んだ内容となっています。

高タンパク食で何が変わったのか?体組成と代謝の変化
まず全体として、高タンパク食は標準的な食事と比較して、以下の変化が確認されています。
- 体重の減少
- BMIの低下
- ウエスト周囲径の減少
- 体脂肪量の減少(平均 −0.64 kg)
- 筋肉量の増加(平均 +0.34 kg)
- 収縮期・拡張期血圧の減少
- 中性脂肪の減少
- 善玉コレステロールの増加
特に注目されるのは、体脂肪を減らしながら筋肉量が増加したという点になります。これは体重が減るだけでなく、体の”質”が変わることを意味しています。
つまり体重計の数字だけでは見えない、健康的なダイエットに必要な変化といえるます。
また、血圧や血中脂質といった生活習慣病に関わる指標も改善されており、体組成だけでなく心臓や血管の健康にも良い影響を与える可能性が示されています。
炭水化物と脂質の組み合わせで結果は変わる
さらに、高タンパク食の中でも炭水化物と脂質の割合によって作用の出方が異なることも明らかになっています。
● 高タンパク × 中程度の炭水化物 × 適度な脂質
- 体重、BMI、ウエスト周囲径、体脂肪量の減少で最も高い効果
- 筋肉量の増加でも最も高い効果
- 収縮期・拡張期血圧でも最も高い効果
この構成は、「体脂肪を減らしながら筋肉を守りたい方に向いているバランス」といえます。
●高タンパク × 低炭水化物 × 適度な脂質
- 中性脂肪の低下で最も高い効果
- 善玉コレステロールの上昇で最も高い効果
このバランスは、「体重よりも血液データの改善を重視したい方に向いている」といえそうです。
興味深いのは、同じ高タンパク食でも「脂質を減らすかどうか」よりも「炭水化物をどれくらい摂るか」のほうが体組成への影響が大きかったという点になります。
つまり、脂質を過度に制限することよりも、炭水化物との組み合わせ方を意識することが、より効果的な可能性があります。

3kg減量を目指す献立イメージ
「高タンパク×中程度の炭水化物×適度な脂質」といわれても、実際の食事にどう落とし込めばよいか迷う方も多いのではないでしょうか。
例として、日本人成人女性で活動量は普通、身長160cm、体重58kgから55kgへ3kg減量を目指す具体的な献立イメージをご紹介します。
なお、これはあくまで研究の栄養比率を日本食に当てはめた参考例になります。
このケースで考えると、1日の維持カロリー約1800〜2000 kcalに対して、1日1650 kcal程度を目安にするとよいと考えられます。
●朝食(約400 kcal、タンパク質:約30g)
ご飯120g・卵2個のスクランブルエッグ・納豆1パック・わかめと豆腐の味噌汁
朝からタンパク質をしっかり摂ることで、日中の食欲が安定しやすくなります。ご飯は8分目を目安に、抜かずに食べることが大切です。
●昼食(約500 kcal、タンパク質:約38g)
ご飯130g・鶏むね肉のソテー130g(塩麹・レモン風味)・ブロッコリーとミニトマトのサラダ・きのこのスープ
昼食は1日の中で最もボリュームをとる食事として設定しています。野菜やきのこを多めにすることで、カロリーを抑えながら満足感を確保できます。
●夕食(約550 kcal、タンパク質:約35g)
サバの塩焼きまたは鮭のホイル焼き100g・豆腐と野菜の煮物・小松菜とえのきのごま油炒め・味噌汁
夕食はご飯をやや少なめに調整します。魚と豆腐を組み合わせることで、タンパク質をしっかり確保しながら脂質は適度に維持できます。ごま油を少量使うことで、脂質を極端に減らしすぎない工夫になります。
●間食(約200 kcal、タンパク質:約20g)
無糖ヨーグルト150g・ゆで卵1個
間食を抜くと夕食の食べすぎにつながりやすいため、タンパク質中心の間食を上手に活用することがポイントです。
●意識したいポイント
- ご飯の量は少し減らしても、おかずのタンパク質は減らさない
- 揚げ物やマヨネーズなど調理で加わる脂質を控えめにする
- 野菜・きのこ・海藻で食事のボリュームを補う
- 急激なカロリー制限は避け、月0.5〜1kgの減量ペースを目標にする
この研究が示すように、減量中こそタンパク質を十分に摂ることが体組成の質を守る鍵になりそうです。体重を減らすことだけを目指すのではなく、体脂肪を落としながら筋肉量を守るという視点が、リバウンドしにくい体づくりにつながります。

「減らす」から「組み合わせる」へ
脂質や炭水化物を極端に制限する方法は、短期的な体重変化につながることもありますが、継続が難しい場合や、体への影響に個人差があります。
タンパク質をしっかり摂りながら、炭水化物とのバランスを意識することが、体の質を変える近道かもしれません。
参考)
Int J Obes (Lond). 2025 Aug;49(8):1480-1489.
今回の研究結果は、ダイエットを目的とした方だけではなく、すべての方に意識していただきたいポイントでもあります。
適度な運動を組み合わせることで、筋肉量の維持・向上につながり、体脂肪のコントロールもしやすくなります。
食事と運動、この両方を意識することが、将来の健康を支える基盤となります。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。

