私たちの心と体は、毎日の食事によってつくられています。
栄養バランスの偏りや特定の栄養素の不足は、うつ症状のリスクを高める可能性があるとも指摘されています。
最近では、小中学生のうつ傾向が決して少なくないことも明らかになってきました。
北海道大学病院の調査によると、小学生の7.8%、中学生では22.8%の子どもたちが「うつ傾向あり」との結果が出ています。
しかし、子どものうつ症状は、大人のようにはっきり現れにくく、まわりが気づきにくいという特徴もあります。
そのため、早期のケアが必要である一方で、発見や対処が難しいのも事実です。
妊娠中のカルシウムが、思春期のうつを減らす?
こうした中、「妊娠中の栄養」と「生まれた子どものメンタルヘルス」との関係が明らかにされました。
2025年5月6日にJournal of Psychiatric Research誌に掲載された愛媛大学の研究では、妊娠中のカルシウム摂取量が多い母親の子どもほど、13歳時点でうつ症状が少ない傾向があることが報告されました。
この研究は、日本の九州・沖縄地域で約1,700人の妊婦さんとその子どもを長期間にわたり追跡調査した「KOMCHS(コムクス)」研究データから関連が明らかにされています。

この調査では約23%の子どもがうつ症状
この調査では、13歳時点で5人1人以上、約23%が何らかのうつ症状を抱えていたことがわかりました。
その中で、妊娠中のカルシウム摂取量が多かった母親の子どもは、うつ症状が少ない傾向があったことを明らかにしています。
なお、この研究での母親の1日あたりのカルシウム摂取の中央値は約482mg。
しかし、妊婦の推奨量は650mg/日とされており、多くの方が基準を満たしていないのが現状です。
カルシウムは骨を丈夫にするだけではない
カルシウムというと、「骨に良い」というイメージを持たれがちですが、実はそれだけではありません。
「脳の指令をスムーズに伝える」、「細胞の分裂・増殖・分化」、「ホルモンの分泌を促す」など、心や脳にとっても重要な役割を果たしています。
妊娠中の栄養管理というと葉酸や鉄に注目が集まりがちですが、カルシウムにもきちんと目を向けることが、思春期の子どものメンタルケアにつながるかもしれません。
さらに、妊娠中は身体的にも、精神的にもストレスが増加するため、慢性的なストレスは胎児にも影響を与えることが知られています。
抗酸化作用のあるビタミンCは、ストレスによって体内で発生する活性酸素を減らし、心身のバランスを整える手助けをしてくれます。
妊娠中は特に必要な鉄、葉酸、カルシウムだけではなくビタミンCも積極的に摂っていただければと思います。

参考)
日本医事新報. 4645号 2013年5月4日
J Psychiatr Res. 2025 Jul:187:80-84.
今回の研究は、「妊娠中の栄養が、子どもの思春期のメンタルヘルスにまで影響するかもしれない」ということを示唆しています。
妊娠中は特に必要な鉄、葉酸、カルシウム、これらの栄養素を多く含む食品は、緑黄色野菜、豆類、海藻類、魚介類、レバーなどです。
これらの栄養素に加えて、ビタミンCも積極的に摂ることを心掛けましょう。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。