中性脂肪が増えるのは脂肪が多い食事をしているからと思っている方はいませんか?
実は、脂肪よりも糖質による影響が大きいのかもしれません。
今回は中性脂肪とコレステロールの違いや糖質についてご紹介します。
中性脂肪とコレステロールの違いは?
中性脂肪もコレステロールもどちらも血液中の脂質であることには変わりませんが役割が異なります。
中性脂肪は、私たちが生きていくためのエネルギー源として大切な役割を担っています。
普段は糖質がエネルギー源となりますが、糖質が不足している場合は中性脂肪が代わりにその役割を果たします。
使われなかった中性脂肪は皮下や内臓などに蓄積され皮下脂肪となりいざというときに使われますが、多すぎると生活習慣病などのリスクを高めるとされています。
一方のコレステロールは、細胞膜の一部となってホルモンや胆汁酸の材料となります。
胆汁酸は脂肪を水に溶けやすくし、食事から摂取した脂肪の消化や吸収を助けています。
コレステロールはたくさん摂っても問題ない
体内のコレステロールのうち、糖や脂肪を使って肝臓などで作られているのが70~80%、残り20~30%は食事から吸収されていて、そんなに多くはありません。
食事から摂取するコレステロールが少ないと体内でつくられるコレステロールは増加し、逆に食事から摂取するコレステロールが多いと体内で作られるコレステロールは減ります。
そのため、食事から摂取されたコレステロールが、そのまま血液中のコレステロールの値に反映されるわけではありません。
以前は、食事からコレステロールをたくさん摂ると血液中のコレステロールが増えるといわれていました。
現在ではコレステロールをたくさん摂っても血液中のコレステロールは増えることはないと否定され、食事摂取基準のコレステロール摂取制限は撤廃されています。
卵は1日1個までといわれていたのが、何個でも大丈夫と認識されるようになったのはこのことが背景にあります。
中性脂肪を下げるには糖質を控える!?
一般的に「脂肪が多い食事は健康に悪い」といわれています。
しかし、2017年11月号のLancet誌に脂肪よりも炭水化物(糖質+食物繊維)をたくさん摂った方が死亡リスクを高めるといった報告なされています。
この報告はマックマスター大学(カナダ)などの研究グループが検証した大規模な追跡調査になります
また、この報告はこの年に世界で発表された学術論文のうち、ニュースやSNSなどで取り扱われた頻度が最も高かった論文として1位に選ばれています(英国情報企業運営サイトAltmetric.com)。
調査内容は、5大陸18か国、30~70歳の健康な男女13万5335人を対象に総摂取エネルギーあたりの脂質と糖質と循環器系疾患の死亡率の関連を平均7.4年間追跡調査したものです。
また、これまでこのような研究は欧米を中心としたものでしたが、この報告では欧米やアジア、アフリカなど低所得国から高所得国まで網羅されています。
解析した結果は以下の通りです。
- 糖質の割合(60.8%以上)が多いと死亡率が上昇した
- 脂質の種類(飽和・不飽和)に関わらず、脂質の割合が多いと死亡率が低かった
- 飽和脂肪酸の摂取で脳卒中リスクが低下した
- 飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸による脂肪の違いは心筋梗塞などの死亡率とは関係なかった
また、リンブルグ大学(オランダ)の研究グループは、1970~1991年に発表された27試験を統合したメタ解析しています。
全員同じカロリーを摂取している対象者の内、ご飯やパンなどの炭水化物全体の5%を牛乳や肉類などの飽和脂肪酸、オリーブオイルなどの一価不飽和脂肪酸、サラダ油などの多価不飽和脂肪酸にそれぞれ置き換えるとどうなるか数学的に検討を行っています。
その結果、中性脂肪が下がることを明らかにしています。
その他、約5万人の女性を約8年間追跡調査した報告では、通常の食事でも脂肪を少なくした食事でも心血管疾患リスクは変わらない。
約35万人を5~23年間追跡調査した報告では、飽和脂肪酸の摂取量と脳心血管疾患の発生率とは関連がなかったなどと報告されています。
このように、一般的にいわれてきた脂肪食についての認識を変えるような報告がたくさん出ています。
ご飯とパン食を減らすというわけではない
糖質を減らすと聞くとご飯やパンとイメージしがちですが、糖類に目を向けるとちょっと視点が変わってきます。糖質はブドウ糖や果糖、ショ糖などの糖類(単糖類、二糖類)とデンプンなどの多糖類に分かれます。
よくいわれる糖分とは一般的に甘いもの指す言葉で糖類のことを指しています。
その代表がスポーツドリンクやジュースなどの飲料となります。
スポーツドリンクは栄養表示の炭水化物で100ml当たり0.8~10gとかなり幅がありますが、ほとんど食物繊維は入っていないと考えられるのでほぼ糖類と考えてよいかと思います。
100mlあたりなので500mlボトルと考えると4~50gとかなりの量になります。
野菜ジュースの糖類は100mlあたり、3.0~9.5gとこちらもかなりの幅があります。糖類が含まれているのは、野菜の青臭さやエグ味を減らすために果物(果糖)を混ぜていることが多いことが考えられます。
もともと野菜は糖質が少ない食品です。野菜ジュースの果糖は砂糖に比べて血糖値が上がりにくいといわれていますが、中性脂肪が上がりやすくなり脂肪として体に蓄積することも考えられます。
ご飯やパンなどの主食よりもジュース(100%果汁、野菜ジュース、乳酸菌飲料、炭酸飲料、スポーツドリンクなどの果糖飲料)やお菓子などから知らないうちに摂っているケースもあるので、飲みすぎや食べすぎには注意しましょう。
参考)
Lancet 2017; 390: 2050-2062
Arterioscler Thromb. 1992 Aug;12(8):911-9.
人間総合科学会誌. 2005 1(1):56-62.
センターニュースきらめっく. 北海道立消費生活センター 2017年11月号
炭水化物制限、低炭水化物、糖質制限、低糖質、ロカボなど、いろいろな言葉がありますが大きな違いはなく、基本的には糖質を減らすことを目的としているようです。
ちょっと体形が気になる方、糖尿病を心配する方は、野菜や海藻、魚などのタンパク質、発酵食品、そして最後に糖質を摂るようにしましょう。
そして、食事にある程度時間をかけて、夜遅い食事はなるべく避けていただければと思います。
もちろん、糖質(糖類)を摂りすぎていると感じる方は控えるようにしましょう。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。