寝だめはダメ?9時間以上の睡眠は脳にダメージを与える可能性

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寝不足は体に良くないことはご存じかもしれませんが、寝すぎも健康に良くないかもしれません。


イエール大学(米国)の研究グループは、40~60代 約4万人を調査した所、1晩に7時間未満または9時間以上寝ている人は将来、脳卒中や認知症のリスクが高まると報告しています。


この報告は、2023年12月29日のJournal of the American Heart Association誌に記載されています。



MRIによる脳内神経画像マーカーで評価




寝不足は、肥満や心臓病、うつ病などさまざまな病気のリスク増大因子になることが明らかになっています。


例えば、国立精神・神経医療センターの研究によると、1日4時間半ほどしか寝ない状態が5日続くと不安や混乱、抑うつ傾向が高まることを明らかにしています。


その一方で、睡眠時間が長い、寝すぎについては、健康への悪影響はあまり知られていません。


そこで、研究グループは睡眠時間と脳の健康に与える影響についてMRIを用いて調査を行いました。


調査したマーカーは以下の2つの指標です。

  • 白質高信号(WMH:white matter hyperintensity)
  • 異方性度(FA:fractional anisotropy)


白質とは脳内にある運動や認知領域に接続する重要な神経ネットワークで、白質高信号はその領域を調べるための指標です。


白質高信号の強度が高い場合は、脳の老化や認知機能の低下、脳卒中リスク増加が疑われます。


異方性度とは、白質の繊維に沿って移動する水分子の方向性を表す指標です。


異方性度が高いと水分子が特定の方向にしっかり制限されているため、脳が健康であるといえます。


逆に異方性度が低いと水分子の方向性がランダムになっているため、白質繊維が損傷していることがわかり脳の老化が進んでいるとことになります。


つまり、「白質信号が高く」、「異方性度が低い」と、脳卒中や認知症リスクが増加することに関連してきます。








寝不足も寝すぎもダメ




研究グループは、40~69歳までの50万人以上が参加する健康データ追跡調査「UKバイオバンク」からデータを使用しました。



収集されたデータには参加者の日中の昼寝も含む1日の平均睡眠時間やMRIのデータなどが蓄積されています。


この中から最初の睡眠時間の聞き取りから9年後にMRIを撮影した約4万人を無作為に抽出し解析を行っています。


そして、アメリカ心臓協会の定める「健康増進のための8項目」に従い以下のような3つに分類し、睡眠時間と脳の健康状態について比較検討を行いました。

  • 短すぎる睡眠時間:7時間未満
  • 最適な睡眠時間:7~9時間未満
  • 長すぎる睡眠時間:9時間以上



その結果、睡眠時間が短すぎても長すぎても脳の健康不良と有意に関係していることが明らかとなりました。


短すぎるまたは長すぎる睡眠時間を取っていた人は、白質高信号が高く、異方性度が低い傾向が認められました。


また、脳に影響を与える高血圧や糖尿病、喫煙など他の危険因子を統計的に調整した後でもこのような傾向が見られたとのこと。


これは睡眠が短くても長くても脳卒中や認知症のリスクが高くなるということを示しています。


研究グループは、観察研究のため因果関係を示すものではないものの、寝不足や寝すぎは脳に存在的な障害(無症状の脳損傷)を与える可能性があると伝えるとともに、睡眠時間を改善することで脳の健康が改善されるかどうかを明らかにしたいと述べています。








参考)

PLoS One. 2013;8(2):e56578.

Yale School of Medicine. News January 29, 2024.

J Am Heart Assoc. 2024 Jan 2;13(1):e031514.





毎日、忙しく睡眠時間が取れないからといいて、休日に寝だめをする方も多いでしょう。


このような不規則な睡眠習慣は将来的に脳を傷つけてしまう可能性があるので、安定的な睡眠習慣を心掛けた方がいいかもしれません。



  • このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
  • 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。

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