健康長寿を目指すには歯が命!!

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口腔内の健康は全身の健康やウェルビーイングに関係していると多くの論文が報告されています。


しかし、そのほとんどが単一因子の健康状態との関連を調査したもので、結論が一致せず専門家の意見が分かれる傾向にありました。


東京医科歯科大学などの研究グループが、口腔内の健康と35の健康やウェルビーイングの指標について網羅的に解析を行ったところ、口腔内の健康状態と死亡リスクが強く相関することを明らかにしています。


この報告は2023年8月11日付のJ Prosthodont Res誌オンライン版に記載されています。



ウェルビーイングとは??



Well-being(ウェルビーイング)とは、Well(よい)とBeing(状態)が組み合わさった言葉で、心身ともに満たされた状態を表す概念です。

従来の健康が身体的に良好な状態を表す狭義の概念であるのに対し、Well-beingは身体的・精神的・社会的にも良好な状態、とより広い概念を表しています。

また「状態」としていることからも一時的・瞬間的に良好かどうかではなく、持続的に良好であるとしていることがその特徴です。

幸せと訳されることの多い「Happiness」は一時的・瞬間的な、精神的な面での幸せを表します。

Well-beingはこのHappinessを包み込むような一段大きな概念になります。











歯のかぶせ物と残存歯を5グループに分けて検討




研究グループは、65歳以上の高齢者で、2010年にJAGESの口腔の健康状態に関する自記式質問票に回答し、2013年の追跡調査に参加した58,137人を対象に検討を行いました。


そのうち、2019年の追跡調査に参加した1万5,905人と、2019年までの全死亡率、認知症、機能障害に関する情報について介護保険データベースとの突合が可能だった3万2,827人を解析対象としています。


そして、歯科補綴物(ほてつぶつ:かぶせ物のこと)と残存歯数を下記の5群に分類。

1. 補綴物あり、残存10~19本群
2. 補綴物あり、残存0~9本群
3. 補綴物なし、残存10~19本群
4. 補綴物なし、残存0~9本群
5. 対照群(20歯以上)


2013年の健康状態と、2019年の35項目の健康およびwell-beingの指標(身体・認知・精神的健康、主観的well-being、社会的well-being、利他的行動、健康行動など)との関連について網羅的に統計解析を行いました。


口腔状態の悪化で死亡リスクが10~33%上昇




その結果、対照群に対する死亡リスクは、10~33%上昇することが明らかとなりました。

1. 補綴物あり、残存10~19本群 10%上昇
2. 補綴物あり、残存0~9本群 26%上昇
3. 補綴物なし、残存10~19本群 16%上昇
4. 補綴物なし、残存0~9本群 33%上昇


また、身体障害リスクは6~14%上昇していました。


1. 補綴物あり、残存10~19本群 6%上昇
2. 補綴物あり、残存0~9本群 7%上昇
3. 補綴物なし、残存10~19本群 14%上昇
4. 補綴物なし、残存0~9本群 10%上昇


特に、補綴物なし、残存0~9本群では、絶望感を感じている割合や健康診断未受診が高く、外出頻度や知的活動、野菜・果物の摂取頻度が有意に少ない結果となっていました。










研究グループは「口腔の健康状態を良好に保つことや歯を失ってしまった場合には歯科補綴治療でこれを回復することにより、死亡や機能障害リスクの低減だけでなく、well-beingの増進に寄与することも示唆された」と述べています。


65歳以上の虫歯は増えている



では、日本人全体の口腔状態はどうなっているのでしょう?


厚労省が歯科疾患実態調査結果の概要を公表しているので見てみましょう。


う歯(以下虫歯)がある割合を世代ごとに見てみると、5~19歳では1993年から2022年の虫歯の割合は大きく減少しています。


一方で、65歳以上の方の虫歯にかかる割合は増加しています。










これは、加齢による唾液量の減少や噛む力の衰えが関係しているかもしれません。


加えて、薬を複数服用することで起こる口腔内の乾燥、入れ歯の使用によって噛みにくくなったりすることとも関係していそうです。


また、世代ごとの平均喪失歯数を見ると25歳以上において、失われた歯の数が減少しています。









この要因は、医療技術の向上や口腔内の健康意識の高まり、マウスウォッシュやフッ素入り歯磨き粉など口腔ケア製品が普及したことなどが考えられます。


65歳以上については、昔よりも失われた歯の数が減少している一方で、虫歯の本数も増えているといえるかもしれません。


また、平成元年(1989年)から日本歯科医師会が推進している、楽しく充実した食生活を送り続けるための8020運動によって、80歳以上で20本以上の歯を保っている方も大きく増加しています。










参考)

J Prosthodont Res. 2023 Aug 11. doi: 10.2186/jpr.JPR_D_23_00091. Online ahead of print.

東京医科歯科大学 プレスリリース. 2023.9.20.

厚労省 歯科疾患実態調査(平成28年、令和4年)





この報告は、口腔内の健康維持が健康長寿につながることを示唆しています。


定期的な歯科検診や違和感があった時はすぐに歯科医に診てもらうことが大切になります。


特に年齢を重ねると歯茎が下がってくるため、歯の根元部分が虫歯になるケースが多いので、しっかり根本も磨くようにしましょう。


歯周病の予防や歯茎の健康に深くかかわっているビタミンCの摂取も忘れずに。



  • このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
  • 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。
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