コーヒーと牛乳といえば定番の組合せです。
もしかしたら、コーヒーに含まれるポリフェノールとタンパク質の組合せが免疫細胞の抗炎症作用を倍増させるかもしれません。
今回はコペンハーゲン大学(デンマーク)が2月8日「Journal of Agricultural and Food Chemistry」誌に発表した内容についてご紹介します。
抗炎症作用と抗酸化作用
抗炎症作用とは、炎症が起きた時にその炎症を鎮める作用をいいます。
例えば、虫刺されによって皮膚が赤くなることがあります。
虫よって体内には入った異物(化学物質・細菌・ウィルスなど)は、免疫システムによって攻撃され排除されます。
この反応によって皮膚の赤身や痒みなどが「炎症」としてあらわれます。
このような症状は次第に治っていきますが、体内で炎症が慢性化してしまうと老化や生活習慣病が促進するといわれ注意が必要になります。
一方、抗酸化作用は体内にできた活性酸素によって、体が酸化しないように抑制する作用のことをいいます。
炎症が起こると活性酸素も発生するので、抗炎症作用と同時に抗酸化作用も働いていると考えてもよいかもしれません。
抗炎症作用ときくと、解熱や鎮痛、抗炎症に働く薬をイメージする方もいると思いますが、実は、抗炎症作用を持つ化学物質は食事からも摂ることができます。
その代表的な物質がポリフェノール、抗炎・抗酸化作用があるので、酸化ストレスを軽減して炎症を予防してくれます。
食材としては、野菜や果物、コーヒー豆、お茶、ワインなどに豊富に含まれています。
しかし、ポリフェノールについては、まだ多くのことが明らかになっていません。
その理由は、ポリフェノールが高い反応性を持つ不安定な物質であるため、他の化学物質と結合しても、どのような機能や作用を生み出すのかわかっていないためです。
ポリフェノールとタンパク質の組合せで抗炎症作用が2倍
そこで研究グループは、ポリフェノールとタンパク質の構成成分であるアミノ酸を結合させたものが、免疫細胞にどのような影響を与えるのかを検討しました。
研究グループは、人工的に炎症を起こしたマウスの免疫細胞を使用して3つのグループに分けて実験を行っています。
ひとつめのグループは、ポリフェノールとアミノ酸を結合したものを免疫細胞に添加、もうひとつは、同じ量のポリフェノールだけを添加、そして対照として何も添加しないグループの3つです。
その結果、ポリフェノールとアミノ酸の結合物質を添加した免疫細胞は、ポリフェノールだけ添加した細胞に比べて、抗炎症作用が2倍高くなることを明らかにしています。
でも、ポリフェノールを含んだ食材とタンパク質を摂ればよいかといえば、そうではないようです。
単純にこれらの食材を摂ったとしても、ポリフェノールとタンパク質が結合するとは限らず、必ずこのような2倍の作用が働くとは限りません。
では、なぜコーヒーと牛乳の組合せはよいのでしょう?
実は、同じ研究グループは先行研究として、ポリフェノールを豊富に含むコーヒーとタンパク質を豊富に含む牛乳を混ぜることで、ポリフェノールとタンパク質を構成するアミノ酸分子が結合することを確認しているためです。
つまり、これらの研究結果を合わせると、コーヒーと牛乳は免疫細胞の抗炎症作用を倍増させる可能性があるということになります。
参考)
J Agric Food Chem. 2023 Feb 8;71(5):2344-2355.
Food Chem. 2023 Mar 1;403:134406.
この報告はまだ細胞レベルで検証されたばかりです。
今後、研究グループは動物実験によってこの効果を確認し、ヒトでの検証、さらに他の食材の組合せでも同じようなことが起きるのかどうか検討を重ねるそうです。
ポリフェノールは抗炎・抗酸化作用がありますが、ビタミンCにも同様の効果があり、α-リポ酸にも強力な抗酸化作用があります。
将来的にビタミンCやα-リポ酸を含んだ食材についても検討が重ねられるかもしれません。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。