私たちの肌は、加齢とともに薄くなり、弾力性やバリア機能が低下してシワが生じやすくなります。
これまでの研究でビタミンCが肌に良いことは明らかにされていますが、新たに、加齢による肌の薄化を防ぐ可能性があることが分かってきました。
この報告は、2025年4月20日付の皮膚学会誌「Journal of Investigative Dermatology」オンライン版に記載されています。
肌はどうやってできるのか?
私たちの肌の最も外側にある「表皮」は、いくつかの層で構成されています。表皮は、最も下の「基底層」にある皮膚の細胞(表皮角化細胞)が分裂して増え、少しずつ上へと押し上げられていくことで作られます。
この細胞は、上に移動する過程で少しずつ性質を変え、「有棘層(ゆうきょくそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「角層(かくそう)」という層を順番に作っていきます。
細胞が増殖するのは基底層だけで、それより上の層の細胞は増えることはなく、上の層へと押し上げられながら、性質を変えて分化することで、肌の構造を作り上げています。

健康な肌を保つためには、この細胞の「増殖」と「分化」のバランスがうまく保たれ、層が正しく作られることがとても重要になります。
ビタミンCが遺伝子の働きに関与
最近の研究で、ビタミンCが細胞の中でとても重要な役割をしていることがわかってきています。
それは、「TET(テット)酵素」という、遺伝子のスイッチを調整するタンパク質を助ける働きです。これをビタミンCがTET酵素の補因子として働くといいます。
私たちの体の設計図である「DNA」は、体の中でいろいろな働きをする遺伝子を持っています。しかし、この遺伝子がすべて、いつも働いているわけではありません。
例えば、肌では肌に必要な遺伝子が、眼では眼に必要な遺伝子が働くように、細胞毎に使う遺伝子が切り換えられています。
このように、DNAの中身を変えずに、使い方だけを変える仕組みを「エピジェネティクス」といいます。
ビタミンCがエピジェネティクスに関わることはわかってきましたが、肌の細胞(表皮角化細胞)では、どのように働いているのかは、これまで分かっていませんでした。
ビタミンCが表皮細胞に働き肌の厚みを増やす
そこで、研究グループは、「ビタミンCが肌の細胞にどんな影響を与えるのか?」を詳しく調べるために、ヒトの肌表皮を再現したヒト培養表皮を使って、表皮角化細胞にビタミンCを加えた時、細胞の働きや遺伝子のスイッチがどう変化するのを調べました。
その結果、以下のような変化が見られました。
●表皮が厚くなった
→表皮角化細胞が増えたことで、肌の層がしっかりした。
●細胞の数が増えた
→ビタミンCによって、肌のもとになる表皮角化細胞が活発に増殖した。
●5-hmCが増えた
→遺伝子のスイッチが調整されていることを示す5-hmCという物質が増えたことで、ビタミンCがエピジェネティクスに関与していることを示しています。

さらに、ビタミンCの影響により、細胞増殖に関わる12個の遺伝子が活性化されていたことも明らかとなっています。
また、遺伝子のスイッチを調整するTET酵素をうまく働かないようにすると、ビタミンCの効果が弱まってしまったため、ビタミンCの効果はTET酵素を通して起こっていることが、改めて確認されています。
参考)
東京都健康長寿医療センター 令和7年4月30日 プレスリリース
J Invest Dermatol. 2025 Apr 20:S0022-202X(25)00416-6.
今回の研究から、ビタミンCは、肌細胞のスイッチをいれ元気にし、肌を厚く保つという、これまで知られていなかったエピジェネティックな働きがあることがわかりました。
ビタミンCはただの「美肌成分」ではありません。
ビタミンCは、加齢により肌の厚みが薄くなってしまうのを防ぐのに有効な可能性があります。
このことを知ってビタミンCを摂れば、もっとお肌が反応してくれるかもしれません。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。