お正月の定番料理といえばお雑煮です。
お餅がのどに詰まってしまい気道閉塞を引き起こすことを知っている方は多いと思います。
しかし、お餅はよく噛んで食べないと胃の中で硬くなり異物になってしまうこと知っている方はほとんどいないかもしれません。
実は胃で消化されて溶けてしまうというのは誤解です。
食べ物による窒息死亡事故は年間3500人以上
厚生労働省の人口動態調査によると、「不慮の事故」による死因のうち、食物が原因となった窒息による65歳以上の高齢者の死亡者数は、年間3,500人以上、中でも、80歳以上の死亡者数は2,500人以上となっています。
食べ物の中でも特に危険なのがお餅です。
消費者庁の公表データでは65歳以上のお餅による死亡者数は平成30年で363人、令和元年で298人となっています。
死亡件数はこの2年間で、10月24件、11月41件(男性:28 女性:13)、12月90件(男性69 女性21)、1月282件(男性:211 女性:71)と年末年始に向けて増加し、年間死亡者数の43%は1月に集中しています。
また、死亡者数は女性より男性の方が2.6倍多くなっています。
お餅は噛まないと胃の中で固まる
お餅は喉に詰まるので気をつけないといけないことは多くの方が知っています。
しかし、消化管異物になってしまうことを知っている方はほとんどいないかもしれません。
お餅は柔らかいため胃で溶けて消化されてしまうだろうと、良く噛まないで飲み込んでいる方はいませんか?
実は胃で消化されて溶けてしまうというのは誤解です。
お雑煮など温かい汁物の中では和らいお餅が、胃の中の温度では溶けない程度に硬くなります。
そして、そのままお餅が胃の中に残ってしまうと胃潰瘍や胃穿孔(せんこう:穴が開くこと)を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。
お餅にはデンプンのアミロペプチンでできており、熱を加えれば柔らかくなりますが、胃酸では消化されず大きいまま胃の中に留まって場合は、胃の中の低い温度で硬く固まってしまい排出されなくなることがあるとのこと。
お餅が胃の中で固まってしまうと外科的処置が必要なことも
2013年に島根大学医学部が日本消化器病学会誌で発表されたされた症例報告あります。
1968~2012年までに報告されたお餅による消化管障害は、医学中央雑誌とMEDLINE(医薬関連文献データベース)で検索したところ、155例の症例があったとのこと。
世代で見ると50~60歳代が多く、次いで40歳代、70歳代となっています。また、男女比は2:1と男性に消化器障害が多くなっています。
また、2018年に仙台市立病院は2016年1月~2017年1月の一年間でにお餅による消化管障害6例(男性4例、平均年齢58.7歳)について症例を報告しています。
参考)
消費者庁 Nes Release 令和2年12月23日
日消誌2013;110:1804―1813.
仙台市立病院医誌 38,3-8,2018.
多くのケースではお餅を食べた後、数時間から数日で腹痛などの症状が出るようです。
これらは論文として報告された件数であるため、実際にはもっと多いかもしれません。
小児や高齢者以外にも、日頃から食べるのが早い、あまり噛まないで飲み込む方は注意が必要です。
つまり、お餅はよく噛んで食べましょうということになります。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。