ライフスタイルと記憶力低下は関係ある?ビタミンCとの関係は??

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年齢とともに記憶力の低下は起こるものです。


その原因は、生活習慣(食事・運動)やそれに関連する生活習慣病などの環境因子と遺伝的因子の両方が関与していると考えられています。


今回は、2023年1月に首都医科大学(中国)の研究グループが、生活習慣と認知症のリスク因子であるアポリポタンパクE(アポE)E4遺伝子保有者と記憶力の低下がどのように関係しているのかを調査していたのでご紹介します。


また、ビタミンCと記憶力の低下の関係についてもお伝えしたいと思います。



認知症の危険因子アポリポタンパクEとは?


アポリポタンパクEは脂質代謝に関係しているタンパク質です。


このタンパク質は遺伝子によって3つのタイプ(E2、E3、E4)があり、E4をもっていると認知症(アルツハイマー病)になるリスクが高くなることがわかっています。


日本人では、アポE E4遺伝子の保有(E3/E4)は非保有者(E3/E3)に比べてアルツハイマー病発症のリスクが約3.9倍になることが報告されています。


また、アポE E4遺伝子保有者の内、女性の方がアルツハイマー病の危険因子になることもわかっています。


しかし、このアポE  E4遺伝子を持っているからといってアルツハイマー病になるということではありません。








60歳以上29,072 人を10年間追跡調査


生活習慣と認知症の関係については多くの調査が行われています。


しかし、正常な認知機能を持っている高齢者を大規模で長期間追跡した調査研究は、ほとんど行われていませんでした。


そこで行われたのが首都医科大学の調査となります。


中国12省の計96地域で認知機能が正常でアポE遺伝子検査を受けた60歳以上29,072 人(平均年齢:72.23歳、女性48.54%、アポEA保有者20.43%)を対象に10年間追跡したというもの。


2009年、2012年、2014年、2016年、2019年に記憶力検査、認知機能検査、生活習慣を調査し、評価を行っています。


生活習慣については、生活習慣質問票から健康的な生活習慣6項目を指標とし、その生活習慣が「好ましい生活習慣(良好)」、「平均的な生活習慣(平均)」、「好ましくない生活習慣(不良)」であったかを3つのグループに分類して比較しています。


健康的な生活習慣6項目とは、以下の通りです。

  1. 健康的な食事(12品目[果物、野菜、魚、肉、乳製品、塩、油、卵、穀類、豆類、ナッツ、茶]中7品目以上を毎日推奨された量を摂取)
  2. 定期的な運動(中強度150分/週以上、または強強度75分/週以上)
  3. 定期的な社会との接触(会合、友人や親族を訪問、旅行などの機会が週2回以上)
  4. 定期的な認知活動(文章を書く、読書、トランプなどのゲームを週2回以上)
  5. 喫煙習慣なし(生涯で100本未満/3年以上前から禁煙)
  6. 飲酒習慣なし


健康的な食事が記憶力低下の遅延に最も影響



調査の結果、どの生活習慣でも10年間で記憶力が下がる傾向をしましていました。


しかし、好ましい生活習慣グループは好ましくない生活習慣グループに比べて、記憶力が低下する割合が緩やかであることがわかりました。


生活習慣6項目の中では、健康的な食事が最も記憶力低下を遅らせることができ、次に定期的な認知活動、そして定期的な運動が関係していました。


そして、好ましい生活習慣グループは好ましくない生活習慣グループに比べて、認知症または軽度認知障害を発症する可能性が90%も低くなり、平均的な生活習慣グループについても、これらのリスクが30%低くなったとのこと。


また、アポE E4遺伝子を保有している人としていない人に分けて解析しても、この結果に変化はなかったそうです。








ビタミンCと認知機能は関係あり



金沢大学付属病院の研究グループは、認知機能が正常な、地域に住む65歳以上の606人を対象に平均7.8年間の追跡調査を行い、ビタミンC摂取量と認知機能について評価しています。


調査時にビタミンCの血中濃度とアポE E4遺伝子検査を行い、男女別にビタミンCの血中濃度が「低い」、「中間」、「高い」の3つのグループに分けて、アポE E4遺伝子の保有と将来の認知機能の影響について調べました。


その結果、アポE E4遺伝子を保有している女性において、ビタミンCを多く摂取していると認知機能低下のリスクを下げる可能性があることが明らかにしています。









しかし、アポE E4遺伝子を保有していない女性と男性では認知機能低下リスクとの関連性に有意な差はありませんでした。


また、アポE E4遺伝子を保有している男性については人数が少なく解析ができなかったとのこと。


研究グループは、アポE E4遺伝子を保有している女性においてビタミンCを多く摂取していると認知機能低下のリスクが低くなる可能性があると限定的に述べています。


参考)

BMJ. 2023 Jan 25;380:e072691.
金沢大学研究ニュース. 2018年5月23日
J Alzheimers Dis. 2018;63(4):1289-1297.






最も健康的な食事が認知症リスクを低くする可能性があることが明らかとなりました。


ビタミンCについては限定的ではありますが記録力低下など認知症にも関係があることが示唆されています。


ビタミンCと認知症の関係については対象者が少ないので、大規模な調査を行えばまた違った結果となるかもしれません。


とはいえ、健康的な食事は認知症だけだはなく肉体的・精神的にも健康になるためのひとつの重要な要素であることに変わりはありません。

  • このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
  • 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。
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