老化を促進してしまう原因といえば「酸化」が有名ですが、最近では「酸化」に加えて「糖化」がキーワードとして注目されています。
最近、話題の糖化について、体への影響や糖化が起こるのはどのような時なのか、また、対処法やよくわかっていない点についてご紹介します。
老化だけではなく、病気も招く!?
酸化は体を「サビ」させるものとして知られていますが、糖化は体を「コゲ」させる現象です。例えば、こんがりと焼けたホットケーキ。この「きつね色」が糖化の正体。
ホットケーキの材料は、小麦粉や牛乳、卵、砂糖ですが、「牛乳+卵」のタンパク質と「砂糖」の糖質がフライパンで加熱することにより結びつきます。その際に「糖化」を起こし、こんがりきつね色になります。つまり「タンパク質+糖質+熱=糖化(きつね色)」。
実は、この現象が体内でも起きています。人間の体はタンパク質でできているので、食事から糖を摂取すると体温によってじわじわ糖化が進んでしまい細胞組織にコゲが現れてくるのです。
糖化されたタンパク質は、糖の濃度が下がれば正常の状態に戻りますが、体内に糖が長時間にわたり過剰に存在すると元に戻れない状態になってしまいます。この糖化がかなり進行してしまうとAGE(エージーイー/終末糖化産物)とよばれる物質ができてしまいます。この物質が加齢にともない体に蓄積され増加するため老化を進めたり、病気を引き起こしてしまうと考えられています。
例えば、加齢とともに血圧が高くなっていくのは、加齢や運動不足により血管が硬くなっていくからですが、硬化ではなく糖化により血管細胞の弾力が失われる老化が原因ともいわれています。
どんな時にAGEは溜まるのか?
AGEが体内で蓄積してしまう仕組みは2通りあります。
ひとつは体内で作られる内因的なAGE。これは血液中のブドウ糖濃度が高ければ高いほど、タンパク質を結びつきやすくなり、糖化を促進させます。この状態が長く続くとAGEが作られてしまいます。
もうひとつは食べ物から体内に入る外因的なAGEです。やっかいなのは食べ物のAGEは食材によって生・ゆでる・焼くなどの調理法によってその量が違うこと。特に「焼く・揚げる」など高温調理でAGEの量が増えやすいことです。
AGEは本当に悪いのか??
AGEは糖とタンパク質の反応により生成します。この反応は食品の褐変反応として1912年に報告された現象で、発見者の名前に由来して「メイラード反応」と呼ばれたり、簡単に「糖化」と呼ばれたりすることもあります。
AGEはメイラード反応によってできる物質であるため、メイラード反応の材料である、糖とタンパク質の種類の違いによって様々な種類のAGEができることになります。
ここから話がややこしくなるのですが、このメイラード反応は食品の中で起きてできるAGEと生体内でできるAGEの2つのパターンがあるということ。
食品の中で起きているメイラード反応は、味噌や醤油などの発酵食品の芳香、味の深み、褐変に関係していて、ここでできる物質をメラノイジンと呼びます。このようなメラノイジンを多く含んだ味噌や醤油、ソースなどを多用する「和食」がユネスコ無形文化遺産として登録されたのをご記憶の方も多いかと思います。
メラノイジンには、金属キレート能(デトックス作用)やリラックス効果、抗酸化作用、整腸作用なども報告されています。
その一方で、食べ物を食べることにより生体内で生成するAGEが、老化や糖尿病の合併症、動脈硬化、白内障、認知症など、ここ15年でその関連性が指摘されるようになり、最近、メディアや新聞、雑誌などで糖化やAGEが取り上げられるようになってきました。
しかし、多くの種類があるAGEの中で、どのAGEが毒性を示すのか?食品中の濃度はどれくらいなのか?体の中でどのように吸収されるのか?また体の中でどのように動くのか?などわかっていないことは、まだまだあるようです。
何が問題なのか?
AGEは、健康な方でもある程度年齢とともに蓄積することはわかっています。問題は、メタボリックシンドロームなど、加齢に関係する病気があるとその蓄積が加速することにより、老化やAGEに関連する病気になるリスクが増えることです。
AGEの蓄積を防ぐには
AGEの蓄積を予防するにはキーワードが3つ。
(1)食べ物からのAGE摂取を防ぐ
食事に含まれるAGEのうち約6~7%がある程度の期間、体の中に残っていることが明らかになっています。AGEは調理法によってその量が異なるため、AGEが多く発生する調理法で調理された食べ物をを控えることが蓄積抑制に働きます(AGE量: 生 < 蒸す・ゆでる < 煮る < 焼く < 揚げる)。
(2)酸化ストレスを減らす
体内でAGEができるまでの一連の反応は、前期反応と後期反応に2つに大別されます。前期反応は元に戻すことができますが、後期反応は酸化ストレスにより生成が促進されてしまいます。そのため、酸化ストレスをなるべく回避して後期反応を完了させないようにすることが大切です(図:生体内で起こるメイラード反応参照)。
(3)抗糖化食品を摂取する
食品に含まれるポリフェノール類には抗糖化作用があるといわれています。例えば、ゴボウや枝豆、セロリ、ピーマンなどの野菜類、緑茶やコーヒーなどにポリフェノール類が多く含まれています。また、最近の研究では豚肉に含まれるビタミンB1もAGEの生成を抑制することもわかってきています。
今回、糖化・AGEについてご紹介しましたが、もともと食品分野で使われ食品に含まれる有益なAGE(メラノイジン)と、食べ物を摂取することにより体内でできる有害なAGEがるようです。そのため、口から入る終末糖化産物と体内でできる終末糖化産物を別の呼び方した方がいいかもしれませんね。
※このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
※専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。
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