大気汚染と聞くと、空がかすむほど汚れた海外の都市を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、空気が比較的きれいな国でも、大気中に含まれるPM2.5の影響を受けている可能性が高いことが知られています。
近年、PM2.5は喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんなどとの関連が指摘され、世界的な健康リスクとして注目されています。
そんな中、オーストラリアの研究グループは、ビタミンCが大気汚染から肺を守るのに役立つ可能性があることを報告しています。
この報告は2025年12月号「Environment International」誌に記載されています。
PM2.5とは?なぜ少量でも問題なのか?
PM2.5とは、直径2.5マイクロメートル以下の非常に小さな粒子で、車の排気ガスや工場、道路の粉じんなどから発生します。
粒子が極めて小さいため、鼻や喉で止まらず、肺の奥深くまで入り込むのことが問題となっています。
世界保健機構(WHO)は、「PM2.5に安全な量は存在しない」としており、これは「健康被害が起こらない下限はない」ことを意味しています。

肺は低濃度でもダメージを受けている
研究グループは、交通量の多い道路付近で集めたPM2.5を使用し、マウスとヒトの肺細胞を用いてその影響を検証しました。
その結果、北米・欧州・オーストラリア並みの低濃度PM2.5の国でも以下のような影響があることを確認しています。
- 肺で炎症反応が起こる
- 活性酸素(ROS)が増える
- 細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアが傷つく
特に重要なのはミトコンドリアへのダメージになります。
ミトコンドリアが壊れると何が起こるのか?
ミトコンドリアは、肺の健康を支える存在といえ、細胞の中でエネルギー(ATP)を生み出す“発電所”のような存在です。
肺では、呼吸機能の維持や炎症のコントロール、組織の修復などに関わっています。
しかし、PM2.5は肺細胞のミトコンドリアを壊し、過剰な活性酸素を発生させ、さらに炎症を慢性化させる悪循環を引き起こします。

そこで注目されたビタミンC
研究チームは、低レベルのPM2.5に曝露させながらマウスに3週間ビタミンC水溶液を与え、肺組織を観察しました。
その結果、水のみのグループに比較して、ビタミンCを与えたマウスでは肺組織への保護効果が認められました。
- 肺の炎症細胞の増加が抑えられた
- 活性酸素の増加が防がれた
- ミトコンドリアの損傷が軽減
- 肺の抗酸化酵素(SOD2、GPX4)が保たれた
また、培養したヒトの肺細胞でも細胞生存率や炎症反応、ミトコンドリアへの影響を改善したことを明らかにしています。

なぜビタミンCなのか?
ビタミンCは抗酸化作用を持つ栄養素として知られています。
活性酸素の除去や抗酸化酵素のサポート、炎症物質の過剰産生抑制などさまざまな働きがあります。
つまり、PM2.5が引き起こす「酸化ストレスと炎症」の両方に働きかけていることになります。
今回の研究に使用されたマウスの飲み水のビタミンC濃度は1.5g/L、体重70kgの成人に換算すると1日約1000mg前後の摂取量に相当します。
但し、研究グループは、「必ずしも現実世界での曝露量や摂取量を反映しているとは限らず、ヒトでの長期的効果や最適な摂取量については、さらなる研究が必要」としています。
参考)
Environ Int. 2025 Dec:206:109929.
毎日の生活の中で完璧な対策をするのは難しいものです。
ビタミンCは万能ではありませんが、低コストで安全性が高く、科学的根拠が積み上がりつつある栄養素です。
だからこそ、ビタミンCのような手軽で続けやすい栄養素を日々の健康のために取り入れてみてはいかがでしょうか?
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。

