健康や美容のためにヨーグルトを食べている方も多いと思います。
スーパーの棚には多くの種類が並びますが、その中によく見かけるのが「乳酸菌」と「ビフィズス菌」。どちらも“善玉菌”として腸内環境を整える働きがあることが知られています。
ビフィズス菌と乳酸菌の同じ仲間とイメージしますが、実はこの2つまったくの別物です。
今回は、乳酸菌とビフィズス菌の違いや特徴についてご紹介します。
腸内細菌と腸内フローラ
私たちの体をつくる細胞は約37兆個といわれますが、腸内にはそれを上回る約100兆個もの腸内細菌が存在しています。
その種類は1000種類以上にものぼり、種類ごとに群れを作って腸内にびっしりとすみついています。
その姿が花畑(flora)のように見えることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。
近年の研究では、腸には独自の神経ネットワークがあり、脳の指令がなくても消化や代謝を調節できることが明らかになっています。
そのため、腸は「第二の脳」とも呼ばれ、免疫やメンタルにも深く関係していると注目されています。
そして、腸内環境のバランスを保つうえで欠かせないのが、乳酸菌とビフィズス菌になります。

乳酸菌とビフィズス菌は人間と昆虫くらい違う!?
乳酸菌とビフィズス菌は似た働きをするものの、分類学的にはまったく異なる細菌です。
乳酸菌は「ファーミキューテス門」、ビフィズス菌は「アクチノバクテリア門」に属しています。
門とは分類学では一番上の分類で、門、網、目、科、属、種と枝分かれしていくので、ヒトと昆虫くらいの違いがあることになります(ヒト:動物界脊椎動物門、昆虫:節足動物門)。
形にも特徴があります。乳酸菌は球状または棒状ですが、ビフィズス菌はV字やY字など枝分かれした形をしています。
ちなみに、ビフィズス菌の語源である「ビフィド」という言葉は「枝分かれ」を意味するラテン語になります。
すんでいる場所が違う
乳酸菌とビフィズス菌は、腸内のどこにいるかも異なります。
ビフィズス菌は酸素を嫌うため、酸素の少ない大腸にすんでいます。
一方、乳酸菌は酸素がややあっても生きられるため、小腸を中心に、チーズや味噌、漬物などの発酵食品にも広く存在しています。
つまり、乳酸菌は外の世界にもいる菌、ビフィズス菌は人や動物の腸内にすむ“腸内専属”の菌といえます。

つくり出す物質も違う
どちらも糖を分解してエネルギーを作りますが、その過程で生み出す物質が異なります。
乳酸菌は名前のとおり乳酸を生成し、小腸の環境を酸性にして悪玉菌の繁殖を抑えます。
近年では、乳酸菌が免疫機能を整えたり、アレルギー反応を緩和したり、血圧や内臓脂肪を減らす可能性も報告されています。
一方、ビフィズス菌は乳酸だけでなく酢酸も作り出します。
酢酸には腸のバリア機能を高める働きがあり、大腸の健康を保つのに欠かせません。
また、便秘や下痢の予防、感染症の抑制、コレステロール低下、さらには認知機能の維持にも関係していることがわかっています。
さらに、ビタミンB群やビタミンK、葉酸といった体に必要なビタミンの産生にも関与しています。

ヨーグルトの味の違いにも関係あり
基本的にヨーグルトは「乳酸菌のみ」と「乳酸菌+ビフィズス菌入り」に分かれ、その味も異なります。
特徴的なのは“酸味”となり、乳酸菌のみのヨーグルトは、発酵による酸っぱさを感じるものが多く、ビフィズス菌入りのヨーグルトは酸味を抑えたまろやかな風味になっています。
最近は菌種ごとの機能性を活かした商品が増え、「腸活」や「免疫ケア」をうたうヨーグルトが人気のようです。

乳酸菌・ビフィズス菌を活かすには“エサ”が大事
せっかく善玉菌をとっても、腸内でしっかり働いてもらうためにはエサが必要です。これをプレバイオティクスと呼びます。
特に以下の3つを意識することでより乳酸菌とビフィズス菌がより働いてくれます。
●食物繊維
食物繊維の中でも特に腸内細菌のエサになりやすい高発酵性食物繊維をとることが大切です。
玄米、ゴボウ、タマネギ、アボカド、リンゴ、キウイ、大豆、海藻などに含まれています。
●オリゴ糖
オリゴ糖(難消化性オリゴ糖)は乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれます。
タマネギ、ニンニク、アスパラガス、トマト、ゴボウ、バナナ、ハチミツなどに多く含まれています。
●難消化性デンプン
難燃性デンプンは小腸で消化されずに大腸まで届き、食物繊維のように働きます。
ジャガイモ、サツマイモ、インゲン、トウモロコシ、穀類などに多く含まれています。

腸内環境を整えるには、「菌」と「エサ」をバランスよくとることが大切です。
ヨーグルトを食べるときは、どんな菌が使われているか、ぜひラベルをチェックしてみてくださいね。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。