立秋をすぎて暦の上では秋が始まりましたが、天気や気温はまだまだ夏です。
夏といえばスイカ。ジューシーで甘く、暑さを吹き飛ばしてくれる存在です。
実はスイカには、6000年におよぶ長い歴史と、多くの健康メリットが秘められていることをご存知ですか?
今回は、スイカの歴史から栄養、食べ方の注意点まで、一挙にご紹介します。
スイカの歴史は6000年以上!
スイカの原種が誕生したのは、北東アフリカの現在のスーダンやリビア周辺の乾燥地帯とされています。
最古のスイカの痕跡は、リビアの先史時代遺跡(紀元前4000年頃)から発見された炭化したスイカのの「種」。
れが明らかになったのは2022年と最近のことで、約6000年前のその種子は、甘いスイカではなく、西アフリカ原産の「エグシメロン(egusi melon)」というスイカの近縁種だったと判明しています。

この近縁種はゲノム解析から苦味の強い果肉を持っていたとされ、当時の人々は果肉ではなく、栄養価の高い種子を食べていたと考えられます。
実際、その種には人の歯によって付けられた損傷も確認されています。
いつ頃スイカの栽培は始まった?
スイカの正確な栽培起源にはまだ議論がありますが、現在のところ、ナイル川流域を中心とした古代エジプト文明(紀元前2500年頃)で栽培が始まったと考えられています。
ピラミッド内部の壁画や墓からスイカの種が見つかっており、壁画には楕円形のスイカが描かれています。これは野生種ではなく、すでに栽培種だったと推測されています。
当時のスイカは甘くなく、固くて苦いものでしたが、エジプト人は、涼しい場所で長期間保存できる「水分補給源」としてスイカを活用していたようです。
そして、比較的早く「食べやすく柔らかいスイカ」が品種改良によって誕生したと見られています。
壁画には、生のまま大皿に盛られたスイカが描かれており、既に生で食べられるほど柔らかかったことがうかがえます。

スイカの栄養素は水分だけではない
スイカは90%以上が水分で構成されているため、栄養価が低いイメージを持たれがちですが、実際にはビタミン、ミネラル、抗酸化物質など様々な成分を含んでいます。
また、100gあたりのカロリーはわずか37〜41kcalと低カロリーです。

ちなみに、「1964年東京オリンピックで金メダルを獲得したエチオピアのマラソン選手アベベ・ビキラが、レース中にスイカジュースで水分補給していた」という説がよく出てきます。
しかし、同時に出場していた選手の証言から、実際には飲んでいなかったことが明らかになっています。
食べるときの注意点は?
スイカは栄養豊富でヘルシーな果物ですが、いくつか注意したい点もあります。
●食べすぎ注意
スイカには利尿作用があるため、一度に食べすぎると体が冷えすぎたり、トイレが近くなったりすることもあります。
1日の目安は200〜300g程度(カット2〜3切れ分)にしておきましょう。
●アルコールと一緒はNG
スイカとアルコールはどちらも利尿作用が強いため、組み合わせると脱水リスクが高まります。飲酒時は別の水分補給を心がけましょう。
●保存にもひと工夫
スイカは一度切ってしまうと長期保存が難しい食材です。カットしたスイカは、冷蔵庫でラップをして保存しましょう。
表面にレモン汁やビタミンCを溶かした水を塗ることで、酸化や乾燥を防げます。
●冷凍保存
カットしたスイカの種と皮を取り除き、冷凍保存も可能です。
完全に解凍すると食感が悪くなるため、半解凍のままスムージーやシャーベットに活用するのがおすすめです。

参考)
Mol Biol Evol. 2022 Aug 3;39(8):msac168.
Proc Natl Acad Sci USA. 2021 Jun 8;118(23):e2101486118.
夏といえばスイカです。
スイカの背景には、6000年にわたる人間の知恵と工夫、そして優れた栄養価があります。
そんな歴史を少し思い出しながら、この夏、じっくり味わってみてはいかがでしょうか?
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。