老化につながる生活習慣はできるだけ改善したいと思う方は多いと思います。
その要因にはどんなものがあるのでしょう?
今回は、老化やその要因についてご紹介します。
老化の遺伝的影響は25%
老化の進み具合や寿命は遺伝の影響が大きいと考えている方もいるかもしれません。
しかし、実際はそんなことはありません。
2006年に南デンマーク大学の研究グループは、一卵性双生児(遺伝情報ほぼ一致)や二卵性双生児(遺伝情報のほぼ半分が一致)の遺伝子情報がそれぞれ寿命にどのくらい近いものになるのか調べています。
まず、60歳未満までは遺伝情報の影響を受けていないことがわかりました。
しかし、60歳を超えると一卵性双生児の寿命がより近づく傾向が観察されています。
また、一卵性双生児の一方の寿命が1歳延びるごとに、二卵性双生児のもう一方の寿命は平均0.21歳延び、一卵性双生児では平均0.39歳延びていることも明らかにされています。
これらの結果から、遺伝情報は寿命に影響を及ぼすが、同じ遺伝情報を持つ双子であっても完全に一致しないことがわかります。
研究グループは、寿命を決めるのは25%ほどが親からもらった遺伝子情報に左右されると試算しています
逆に言えば、75%については自分の手で遅らせることができる可能性があるといえます。
まずできることは生活習慣の改善となります。
では、老化を決める生活習慣にはどのようなものがあるのでしょうか?
老化の要因ランキング
2023年3月に上海交通大学の研究グループが、欧州人約34,000人を対象に老化要因についてランキングを試みています。
比較対象は老化に関連するDNAの変化と、生活習慣(喫煙、アルコール、睡眠、運動など)、代謝関連因子(BMI、ウェスト、体脂肪など)、社会的経済因子(教育、収入)の関連性について、これらがどの程度老化に関係しているか検討を行いました。
研究グループは、その評価を「GrimAge(死亡リスクを計算)」と「PhenoAge(平均余命を予測)」という生物学的老化指標を使って関連性を求めています。
遺伝子の変化は、欧州の最大100万人を対象としたゲノムワイド関連研究(GWAS)から老化に関係するDNA変化データを抽出、生活習慣との関係については、欧州で行われた28の追跡調査結果、3万4,710人を対象に解析しています。
なお、GrimAgeの方が、死亡率との関連が強いことが知られています。
その結果、以下のような老化の要因ランキングを示しています。
この研究は老化の要因と速度を定量的に検討した報告ですが、概ね納得できるランキングとなっています。
ランキングの中に昼寝や小児期の肥満が入っていますが、この研究は、生活習慣などとDNAの変化を検討したものなので、結果が理由となっている訳ではありません。
小児期の肥満は、必ずしも大人になって老化が始まるとは限らないことを示しているといえそうです。
老化は一定の速度で進行するわけではない
老化は一定のペースで進行すると考えている方が多いかと思いますが、老化が急激に起こる年齢があるようです。
2019年にスタンフォード大学の研究グループは約4,200人(18~95歳)から得られた血液サンプルを用いて、約3,000種類の血漿タンパク質の測定をしています。
その結果、老化に伴い変化するものが1379種類もあることを特定しています。
これらのタンパク質の多くは比較的安定して動いていましたが、34歳(青年期)、60歳(壮年期)、78歳(老年期)という3つのポイントで急激に変化することが明らかにされています。
これらの3つの年齢でタンパク質に変化が起こる理由については明らかにされていませんが、老化は3つのプロセスに分かれていると考えられます。
見た目年齢に影響する光老化
加齢に伴って生じる生理的老化とは異なり、太陽光(紫外線)によって生じる肌の老化のことを光老化といい、肌の老化の8割を占めているといわれています。
高齢になると顔や手にはシミやシワが多くなりますが、紫外線を浴びない部位は細かいシワはあるもの深いシワはできません。
老化とは加齢とともに生理的機能が損なわれていくことですが、光老化は慢性の紫外線障害といえます。
加齢による老化は皮膚の厚さや色が薄くなる方向に向かいますが、光老化は紫外線に対する防御反応として現れるので、皮膚が厚くなり、色も濃くなり、それがシミやシワとなります。
光老化は生理的老化とは異なりますが、十分に対策すれば予防することができます。
参考)
Hum Genet. 2006 Apr;119(3):312-21.
J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2023 Jul 8;78(7):1083-1091.
Nat Med. 2019 Dec;25(12):1843-1850.
老化は自分の手で遅らせることができ、喫煙や飲酒、肥満に気をつけて健康な生活によって、その速度を遅くすることができそうです。
また、34歳・60歳・78歳付近では特に意識的なエイジングケアを心掛けることで、さらに老化を遅らせる可能性が高まるということになるでしょうか。
光老化予防のため紫外線を防御しすぎると肌のバリア機能と関係があるビタミンDが作られません。そのため、適度な量の太陽光を顔や手に5分~数十分程度は浴びることも必要です。
エイジングケアのひとつとして、ビタミンCをこまめに摂ることも忘れないようにしましょう。
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません。