ビタミンCを摂りすぎると結石の原因となるとよくいわれます。
実際のところどうなのかを調べてみたのでご紹介します。
厚生省の見解は?
厚生労働省は、ビタミンCの推奨量を成人で1日あたり100mgと設定しています。また、通常の食事では過剰摂取の報告がないため耐用上限量は定めていません。
さらに、腎機能障害を有する者が数g/日のビタミンCを摂取した条件では腎シュウ酸結石のリスクが高まるため、サプリメント類から1g/日以上の量を摂取することは推奨できないとしています。
ビタミンCが結石の原因といわれるようになったきっかけは?
ビタミンCが結石の原因となるといわれるようになったきっかけは、2013年にスウェーデンの研究グループが約23,000人の男性を対象に10年間追跡調査を行った報告かもしれません。
報告内容は、サプリを摂っていないグループ約22,000人、ビタミンCサプリを摂っているグループ約900人を比較した場合、腎臓結石の発生リスクが約2倍に増えるというものです。
しかし、この報告は観察研究でありビタミンCが原因とはいえないこと、食事摂取状況や生活習慣、サプリ利用状況について調査を開始した1997年に1度行われただけなど、その手法について信頼性が乏しいものでした。
また、これまで特に問題となってこなかったビタミンCと腎臓結石の関係について調査した報告であったため、いろいろな場面で使われるようになったと考えられます。
腎臓結石は2種類ある
腎臓結石には2種類のタイプがあることを知っていますか?
腎臓結石は、尿がアルカリ性か酸性かによってできる結石の種類が異なってきます。
まず、代表的なものはリン酸カルシウム結石、これはアルカリ性の尿でできやすい結石です。
ビタミンC(アスコルビン酸)はその名前の通り、酸性の成分であるため、アルカリ性に傾いた尿を酸性にしてくれるので予防効果が期待できます。また、リン酸カルシウム結石を溶かす働きもあります。
一方で酸性の尿でできる代表的な結石がシュウ酸カルシウム結石です。
ビタミンCによってシュウ酸はできますが、ビタミンCだけがシュウ酸を作るわけではありません。フェニルアラニンやチロシン、グリシンなど多くのアミノ酸、キシリトールでもシュウ酸ができることが明らかにされています。
ビタミンCによってシュウ酸カルシウムができるかというとそうでもないようで、ビタミンCによってカルシウムが結合してしまい、シュウ酸カルシウムのできる量が少なくなるという意見や、ビタミンCによってシュウ酸ができる代謝経路は主な経路ではないとの指摘もあります。
現在では、食事によって摂取するシュウ酸の影響が大きいといわれ、葉物野菜や豆類、ナッツ類といったシュウ酸が含まれる食品の摂取によるリスクに比べて、ビタミンCによるリスクは極めて低い考えられています。
他の調査でもリスクは報告されていない
1965年から10年間間隔で行われる全国尿路結石疫学調査というものがありますが、最新の2005年までビタミンCと尿路結石リスクについての報告はありません。
このように健康な方の場合は、ビタミンCを摂っても腎臓・尿路結石になるリスクはほとんどないといえそうです。
腎臓・尿路結石症はビタミンCよりも食生活とのかかわりが深く、肥満や高血圧、糖尿病といった生活習慣病などに多いと報告されています。
もし思い当たる方がいれば食生活を改善することが必要です。
これからも一石四十鳥のビタミンCを気にせず摂っていただければと思います。
腎機能に病気のある方や不安のある方は、かかりつけ医に相談してみましょう。
参考)
・JAMA Intern Med. 2013 Mar 11;173(5):386-8.
・ビタミン 1998 年 72 巻 10 号 p. 523-529
・ビタミン 2013 年 87 巻 10 号 p. 575-578
- このコラムで紹介した情報は、一般的な知識のみを目的としたものであり、栄養素の効果・効能を保証するものではありません。
- 専門的な医学的アドバイスや特定の病状に対する治療の代わりとはなりません
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