シリーズ冒頭からいきなりビタミンC健康作用のメインイベンターが登場です。
その名も「抗酸化作用」です。ビタミンCは抗酸化作用を持った「抗酸化物質」です。
わたしたち生物は空気中の酸素を摂りいれて生きています。
体内でエネルギーを作るとき、無酸素状態に比べ、酸素を使うと20倍も効率良くエネルギーが得られます。
ところが、酸素は生物にとって有益であると同時に猛毒でもあるのです。
私たちが摂りいれた酸素のうち、約1~2%が“フリーラジカル”として、わたしたちの身体を攻撃してくるのです。
その攻撃を“酸化”といいます。
それでも高エネルギー効率を諦められないわたしたちは、進化の過程で酸素を安全に利用するための解毒システム=“抗酸化システム”を備えるようになりました。
ビタミンCはこの抗酸化システムの中で大きな役割を果たすのです。
フリーラジカル
さぁて、いきなり出てきましたねぇ、“フリーラジカル”。
ちょっと説明が要りますよね。
ここからしばらくは分子レベルの化学のお勉強です。それほど難しくない話ですから、ちょっとお付き合いください。
あ、そこのあなた、いまこのサイトを閉じようとしたあなたです!
大丈夫です。書いている私も高校時代は化学が大の苦手でしたから。そんな私でも分かる範囲です。
分子では原子核の周りの軌道上を電子が飛び回っていますが、軌道に二つの電子が入ってペアを作ると安定になります。
軌道に一つの電子しか入っていないときは不安定で、ペアを作って安定しようとしてほかの分子から電子を奪ったり、ほかの分子に電子を渡してしまったりします。
この電子を奪うことを「酸化」といい、電子を渡すことは「還元」と呼びます。
ペアを作っていない電子のことを不対電子(ふついでんし)といい、フリーラジカルとは不対電子を持つ分子のことで、極めて“反応性の高い”状態にあります。
反応性が高いとは、安定しようとして常に電子を奪ったり与えたりするチャンスをうかがっている状態のことです。
ですから、フリーラジカルは“酸化物質”であり、同時に“還元物質”でもあるわけです。
危険なのはフリーラジカルが酸化物質として働く場合で、体内の安定している中性分子から電子をひとつ奪うことで次から次へと電子の奪い合いが始まる化学反応のドミノ倒しの引き金になるからです。
この連鎖反応は、フリーラジカルとフリーラジカルが合体して中性化するか、他の分子とくっついて中性の異常分子ができるまで止まりません。
そして、この異常分子はもはや生体としての機能を失ってしまいます。
酸素
話を酸素に戻します。酸素(正確には酸素分子)は中心の原子核の周りに16個の電子を持っていて、そのうち14個の電子がペアを組み、残りの2個はペアを作らずにいます。
さきほど、ペアを作らない電子を持った分子をフリーラジカルと定義しましたから、酸素は「2個の不対電子を持ったフリーラジカル」となります。
酸素というフリーラジカルは常に安定になろうとして、わたしたちの身体の中でその機会を探しています。
その結果、例えば細胞膜の脂質から電子を奪って(酸化して)過酸化脂質を生み、またDNAやたんぱく質などを攻撃して細胞の正常な代謝を妨げます。
この代謝不全が、がんをはじめ様々な生活習慣病や疾病の原因となります。このような酸素に由来するフリーラジカルは“活性酸素”と呼ばれています。
活性酸素
活性酸素は酸素の摂取だけでなく、例えば水に放射線を当てただけでも発生します。意外に思えるかもしれませんが、わたしたちの暮らすこの世界は放射線に満ちあふれています。
健康診断でX線を浴びるだけではありません。太陽の光も立派に放射線なのです。
また、工場から出るばい煙、クルマの排気ガス、たばこの煙を吸い込むことでも活性酸素は生み出されているのです。
つまり、わたしたちは普通に日常生活を送るだけで活性酸素の危険に身をさらしているわけです。
活性酸素を無力化するのは
そんな環境にあって、抗酸化物質のビタミンCは、それ単体で活性酸素に電子を渡して それを中性化し、またわたしたちが体内で合成するグルタチオンという強力な抗酸化物質や外部から取り入れるビタミンEなどとお互いに協力してフリーラジカルを中性化する“フリーラジカル・スカベンジャー”として大活躍してくれているのです。
どうでしたか、そこのあなた。難しいことなんかすっ飛ばしていただいて結構ですよ。 ただ、「ビタミンCは、わたしたちの身体の酸化したところを直してくれている」これだけ分かれば十分です。
ビタミンCを飲んでみたくなりましたか?え?まだですか。では、もう少しこのシリーズにお付き合いください。ではでは。
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[…] シリーズ2回目は「抗酸化作用」です。 […]